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名古屋地方裁判所一宮支部 昭和44年(ワ)192号 判決 1973年5月29日

主文

一  被告は原告に対し別紙目録記載の土地につき昭和三三年四月一〇日取得時効を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第一  原告は、主文と同旨の判決を求め、その請求の原因としてつぎのとおり述べた。

一  原告の先代玉次郎は昭和一三年四月九日家督相続をし、別紙目録の土地(以下本件土地という。)の占有を取得した。

すなわち、本件土地は原告の先々代玉次郎が青木喜市、岩田艶十、酒井柳蔵の三名に対し分割して賃貸していたところ、原告の先代玉次郎においてその状態のまま占有を開始したものである。

二  原告の先代玉次郎は昭和四一年八月三〇日死亡するまで本件土地を占有したので、昭和一三年四月一〇日から二〇年を経過した同三三年四月一〇日取得時効により本件土地の所有権を取得した。

三  原告の先代玉次郎の前記死亡により、原告が相続により本件土地の所有権を取得したので、原告の先代玉次郎の取得時効を援用する。

四  よつて原告は被告の先代兼太郎の相続人である被告に対し右取得時効を原因とする所有権移転登記手続を求める。

第二  原告は、「被告は原告に対し本件土地につき昭和二三年四月一〇日取得時効を原因とする所有権移転登記手続をせよ。

訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因としてつぎのとおり述べた。

一  原告の先代玉次郎の本件土地の占有関係は第一と同様である。

二  原告の先代玉次郎は占有の始無過失であつたから、昭和一三年四月一〇日から一〇年を経過した同二三年四月一〇日取得時効により本件土地の所有権を取得した。

三  原告の先代玉次郎は昭和四一年八月三〇日死亡し、原告が相続により本件土地の所有権を取得したので、原告の先代玉次郎の取得時効を援用する。

四  よつて原告は被告の先代兼太郎の相続人である被告に対し右取得時効を原因とする所有権移転登記手続を求める。

第三  原告は、「被告は原告に対し本件土地につき名古屋法務局江南出張所大正一二年一二月二〇日受付第三一一八号をもつて同日売買を原因とし間宮兼太郎のためにされた所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因としてつぎのとおり述べた。

一  本件土地は原告の先々代玉次郎の所有であつた。

二  同人は昭和一三年四月九日死亡し、原告の先代玉次郎が家督相続によつて本件土地の所有権を取得した。

三  原告の先代玉次郎は昭和四一年八月三〇日死亡し、原告が相続により本件土地の所有権を取得した。

四  本件土地につき名古屋法務局江南出張所大正一二年一二月二〇日受付第三一一八号をもつて同日売買を原因とし原告の先々代玉次郎から被告の先代兼太郎に対する所有権移転登記がされている。

五  よつて原告は被告の先代兼太郎の相続人である被告に対し、本件土地の所有権に基づき右移転登記の抹消登記手続を求める。

第四  被告は、「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、答弁および抗弁としてつぎのとおり述べた。

一  原告の請求原因第一の一の事実中、原告の先代玉次郎が原告主張の日に家督相続をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。

二  同二の事実は否認する。

三  同三、四の各事実中、原告の先代玉次郎が主張の日に死亡し、原告が相続によりその地位を承継したこと、被告の先代兼太郎が死亡し被告が相続によつてその地位を承継したことは認める。

四  原告の請求原因第二の一に対する答弁は前記一のとおりである。

五  同二の事実は否認する。

六  同三、四に対する答弁は前記三のとおりである。

七  原告の請求原因第一、第二に対する共通の抗弁

1  かりに原告の先代玉次郎が昭和一三年四月一〇日から本件土地を占有したとしても、同人は所有の意思を有せず、平穏、公然の占有ではなかつた。また第二については占有の始善意ではなかつた。

2  別紙目録一の土地は農地であつて第三者に賃貸されており、農地法上の小作地に該る。原告は農地法六条、七条の規定によつて右土地の所有が許されない。従つて原告は右土地の所有権を取得することができない。

八  原告の請求原因第三の一の事実は認める。

九  同二の事実中、原告の先々代玉次郎が主張の日に死亡し、原告の先代玉次郎が家督相続をしたことは認め、その余は争う。

一〇  同三の事実中、原告の先代玉次郎が主張の日に死亡し、原告が相続によつてその地位を承継したことは認め、その余は争う。

一一  同四の事実は認める。

一二  同五の事実中、被告の先代兼太郎が死亡し、被告が相続によつてその地位を承継したことは認める。

一三  原告の請求原因第三に対する抗弁

原告の先々代玉次郎は大正一二年一二月二〇日被告の先代兼太郎に対し本件土地を売渡す契約をし、所有権を喪失した。

第五  原告は被告の抗弁に対しつぎのとおり述べた。

一  被告の抗弁七の1の事実は否認する。

二  同2の事実中、別紙目録一の土地が農地であり第三者に賃貸されていることは認めるが、その余は争う。農地であつても取得時効の対象外となるものではない。

三  同一三の事実は否認する。

第六  証拠(省略)

別紙

目録

一 江南市大字五明字青木添七九番三

畑  六二八平方メートル(六畝一〇歩)

二 同所七九番四

宅地 一五三・七八平方メートル(四六・五二坪)

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